第85話 鬱陵島(ウルルンド)を訪ねて

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「坂本龍馬八十八話」
第85話 鬱陵島(ウルルンド)を訪ねて

 坂本龍馬が開拓を目指した竹島、現在の韓国・鬱陵島(うつりょうとう=ウルルンド)を訪ねてみようと考えた。
龍馬は慶応三年(一八六七)三月六日、印藤肇あて手紙の中に次のように書いている。
「良林及海中の品頬よきものを得バ
人をうつし万物の時を得るよろこび
諸国浪生らを命じて是が地を
開かすべしと、其余思千万ナリ。」
良い木材、海産物を得る開拓を目指していた龍馬は一度も竹島((鬱陸島)を見ていない。
成田空港から釜山(プサン)へ飛び、釜山から高速バスで浦項(ポハン) へ行く。浦項から高速フェリーで三時間でウルルンドに着く。
この島の面積は七三平方キロメートルで世田谷区と渋谷区を合わせた広さがある。
昔、この島は火山島で火口に土砂が堆積して平野ができている。龍馬は、
「壱里余より弐里もあらん平地ありしと也」
と手紙の中に書いている。
上陸してみると、広い平野があり、龍馬が持っていた情報と合致している。しかし、土砂が堆積した土地であり、肥沃ではないようである。龍馬が希望した稲・麦の作付けは無理のようである。
しかし、海産物に関しては豊富であり、ウルルンドの土産品売場では魚類・貝類・海草類の生もの、加工品が販売されていた。
フェリーが発着する桟橋は狭く、島全体は岩壁で囲まれており、良港はどこにもないようであった。
もし、いろは丸でこのウルルンドに到着しても、船を横にする場所はなかったと思われる。
沖に碇泊させ小舟で近づき上陸するようになったであろう。
冬は積雪もあり、かなり寒いということであり一年中の漁船の操業は無理と思われる。
龍馬の描いた開拓の夢は実現したであろうか。否であろう。
龍馬のいろは丸沈没という情報をうけて、岩崎弥太郎はこの島に上陸している。しかし、彼もこの島の開拓には乗り出していない。
吉田松陰もこの島の開拓に夢を描いたが、これも実現しなかった。
「元禄九年お引渡の事」という事実があった。松陰はその事実を認識しながらも、防衛という問題でこの島に注目していたのである。
しかし、龍馬も岩崎弥太郎も経済という視点からウルルンドを見ていたのであり、軍学者と経済人という違いが如実である。
このウルルンドに上陸してみて、観光地として栄えている島に最も良い産業は、やはり観光であろうと考えた。
「龍馬が行きたかった島」として宣伝すれば、かなり多くの日本人観光客が訪れるのではないだろうか。
日韓両国にとっても良いことと思われる。
これは竹島(韓国名、独島(トクト)問題の良い解決をもたらす糸口となるかもしれない。